5月の中旬頃、さいたま新都心のけやきひろばでビール祭りが開かれていたので、友人と少しビールを飲んでいくことにしました。たった1杯のビールに、その日食べたラーメンよりも高いお金がかかったのには閉口しましたが、そこは祭りということで甘んじて受け入れます。せっかくなので、普段は飲まない珍しいビールを飲もうという話になり、とはいえハズレを引くのも癪ですから、「ビールといえばドイツだろう」というノリで、ドイツのビールをそれぞれ1杯ずつ購入しました。沢山の人で賑わっていましたが、なんとか落ち着けそうな場所を見繕い、おまけでいただいたビーフジャーキーとともにビールを味わいます。
――うまい。格別に美味しい気がしました。私は、普段は『金麦』のような第三のビールを「うまい、うまい」と飲んでいるような人間で、正直に言えばビールの味なんかわかっちゃいません。ある時、友人たちと「ビールを目隠しして飲んでメーカーを当てる」というゲームをしたのですが、私は本物のビールと第三のビールすら区別できない有様でした。そんな私が言っても説得力がないかもしれませんが、確かにビール祭りで飲んだドイツのビールは、いつも飲んでいるものよりも遥かに美味しい気がしたのです。さすが祭り、さすがドイツ、と言うべきでしょうか。1杯のビールはたちまち飲み干されてしまいました。
1杯で終えるつもりだったのですが、名残惜しく2杯目を購入します。やはり金額が気になりますが、祭りですからやむを得ません。今度頼んだのは瓶ビールでした。産地は忘れてしまいましたが、普段は飲めないような独特な味のするビールで、不味くはないのですが、美味しさよりも物珍しさを堪能することになりました。ハズレを引いたと思うのは癪なので、口では「うまい」と言っておきます。美味しかったはずです。もう記憶もおぼろげですけれど。
しかし、これで千円弱。2杯飲んで2千円弱。これが祭りなのかと思わざるを得ません。500mlのスーパードライを6缶買ってもお釣りがくるのです。もちろん、祭りというシチュエーションに価値がありますから、単純な価格計算が無粋だというのはわかります。それでも、満足度という点で、祭りは若干不足がある気がしなくもありません。コスパを追求する私の合理性は、私の貧乏性と密接に繋がっているのでしょう。あるいは、いち参加者の傲慢です。悪しきお客様精神が顔をもたげているのです。
とはいえ、楽しむことはできました。祭りの空気の中、お酒を飲み、お喋りして、いい気分で帰路につきます。横断歩道を小走りで駆けてみたりします。すると、ポケットからiPhoneが飛び出して、ガタッ、とアスファルトに接地しました。手に入れてから一年半、強化ガラスの保護シートを貼ったりもして、比較的綺麗な状態を保てていた私のiPhoneは、いともたやすく、あまりにあっけなく、その液晶をバキバキにしたのでした。保護シートは綺麗なままに。
――これが祭りなのです。喜怒哀楽のドラマがある祭りなのです。けやきひろばのビール祭り、9月に再び開催するそうですから、皆さんも一度参加してみてはいかがですか?
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